とりあえず現段階でのまとめ


593 龍×千鶴  1[sage] 2009/01/01(木) 17:55:38 ID:3kB5TPcW

高校最後の夏、龍にとっては高校最後の大きな試合が待っている。
この試合を最後に、龍たち3年は部活を引退し、進路に専念しなくてはならない。
「甲子園はまあ無理だとしても、せめて全道大会は出たいな」
その夢を実現するには、地区大会を制覇しなくてはならない。春の大会では、あと一歩のところで敗退している。既に正キャッチャーとしてチームの要となっている龍は、練習に余念がない。
「頑張れよ、龍!応援してっからさ!」
「……ん」
放課後、声をかける千鶴に、毎度のことながら愛想のない返事をして龍はグラウンドへと向う。その手には、『野球馬鹿野郎』と書かれた巾着がぶら下がっている。
既に1年以上も持ち歩いている所為で結構ダメージを受けてはいるが、今日も龍の大切なミットを守っている。
その巾着に視線を落とすと、千鶴は一人照れ笑いをした。


「あー、そろそろ進路決めなきゃねえー」
帰宅途中にあやねがそんなことを言い出したのは、ホームルームに配られた進路調査用紙の所為だ。3年になったばかりのときも配られたその紙だが、今回は1学期の中間テストの結果を踏まえ、再調査の為に配られたものだった。
「爽子は進学するんでしょ?」
急に話を振られ、爽子は言葉に詰まりながらも答える。
「あっ……うん……そのつもりでいる……」
「だよねー。最近風早も勉強頑張ってるみたいだし」
あやねが冷やかすと、爽子は顔を真っ赤にして下に向ける。最近、風早は爽子と同じ大学を目指し、脇目も振らずに勉強に励んでいるらしく、その成果は目を瞠るほどだ。
相変わらずの純愛っぷりに、訊いたあたしが馬鹿だった、とひとりごちて話題を千鶴に振り直す。
「ちづは?」
「アタシ?……う、うーん……」
1度目の調査のとき、千鶴はその用紙に『未定』と記入して提出した。自分は何になりたいのか、何をしたいのか。未だにはっきりしていない。
「子供好きだから、先生とかもいいかと思ったんだけどさぁ……」
「あー、それ以上言わなくても分かる」
勉強嫌いな自分が、子供に勉強を教える立場になれるわけがない。千鶴が言いたいことは、あやねにも簡単に想像できた。
「あ〜〜〜っ!いっそ、体育だけ教える先生になれたらなあっ!」
「じゃあちづちゃん、中学とか高校の体育の先生になれば……?」
千鶴の言葉を受けて、爽子なりの助言をしてみる。が、千鶴は、それも考えたんだけど、と続けた。
「でもさ〜、アタシがなりたいのは小学校の先生なんだよ。中学とか高校とか、こう、中途半端に知識つけたヤツとかはイヤなんだよ〜〜」
と、一度は教職に就こうと思った人間の発想とは思えないセリフが飛び出し、あやねは深く溜息を吐いた。
「ま、ピンみたいのでも先生になれるんだから、アンタも頑張ってみれば?」
「う、う〜ん……」
あやねがあまり励ましとは思えない言葉と同時に千鶴の肩を叩くと、千鶴は何かを考えるように口を結んだ。
594 龍×千鶴  2[sage] 2009/01/01(木) 17:56:40 ID:3kB5TPcW

「おお、龍!お疲れー!」
練習が終わりクタクタの中帰宅して店を覗くと、龍の代わりに店を手伝っている千鶴が出迎える。龍の部活が忙しくなり始めたとき、千鶴が自分から提案したのだった。
その申し出があったときはさすがに悪いと思い断ったのだが、千鶴が断固として譲らなかったため、夏の試合が終わるまでの約束でお願いすることになった。
「ちづちゃん、もう店も落ち着いてきたから、上がっていいよ。いつもありがとな」
「なんのなんの!」
「急いで作るから、龍と一緒に喰ってきな」
「ありがとー!」
そういって、店を出る龍の背中に続く。
程なくして出来上がったラーメンを龍の部屋で戴いているとき、ふと、帰り際の話題を龍に振ってみた。
「龍は、何になりたいのさ」
「ん?」
急に放たれた話題に着いて行けず怪訝な顔をする龍に、進路調査用紙、とひとこと投げると、ああ、と思い出したように頷いた。
「野球で喰っていけるならそうしたいけど、それは無理だから」
「だから?」
「……まあ、いろいろ考えてる」
「……そっか……まあ、アタシもそうだけどさ」
話題はそれ以上広がりを見せず、ラーメンを啜る音だけが部屋に響く。互いに食べ終わって器を重ねた後、千鶴が帰宅の用意をする。
「器、下げとくね」
「千鶴」
帰ろうと器の乗った盆を持ち上げようとした時、不意に呼び止められる。顔を上げた瞬間、龍の唇が千鶴のそれに重なった。
一瞬だけ、軽く触れただけのキスだったが、久しぶりの接触だ。
「な、なにしてんのさっ」
「なにって、キ」
「いいから、言うなっっ!」
放っておくと、『キス』という露骨な単語が出てきそうで、千鶴は大声で遮った。―――そんなこと言わなくても分かってるって!
こんなキス一つでドキドキしてしまう自分が悔しい。キスなんてセリフだけでも照れてしまう自分がもどかしい。
一気に階段を駆け下りて器を返すと、
「あれ?ちづちゃん、顔、どうかしたかい?」
と龍の父親に指摘されるほど、千鶴の顔は真っ赤に染まっていた。
595 龍×千鶴  3[sage] 2009/01/01(木) 17:58:21 ID:3kB5TPcW

梅雨のない北海道が一番過ごしやすくなる頃、龍たちの出場する地区予選大会が始まる。
いざ開幕してみると、龍のチームは思わぬ快進撃を見せていた。今年入学した1年生も結構な粒ぞろいで、代打や代走などで活躍を見せる選手もいる。
このトーナメント中、最大の敵といわれる学校と対戦するのが土曜日だと分かったとき、応援に行きたいと思った。しかし、千鶴には龍と約束した店の手伝いがある。自分から言い出したことを反故に出来るわけはない。
―――龍、負けんな。
スタンドで大声で応援する代わりに、千鶴はいつもよりも元気な声で接客をしている。
そろそろ試合が終わるころだろう、というとき、千鶴の携帯が震えた。着信の知らせだ。
今日は、千鶴の代わりにあやねと爽子が応援に行ってくれていた。恐らくこの電話は結果を知らせるためのものだ。
店主である龍の父親にひとこと断ってから、店の外で通話状態にする。
「も、もしもし?やのちん?」
向こうから聞こえてくる音の中に、歓声はない。それだけで分かる。
『……ちづ……』
「……負け、た?」
『……うん、ダメだった……』
「……そっか」
知らせてくれてありがとね、とだけ言って通話を切る。泣くな。泣きたいのはアタシじゃなく、龍だ。
きっ、と唇を結んで店に戻ると、出来るだけ明るい顔で龍の父親に告げる。
「おっちゃん!……龍、負けたっ!」
一瞬、悲しげな表情を見せた父親だったが、すぐに笑顔に戻る。
「そっか!残念だったな!」
店はまだまだ客足が途絶えない。それどころかますます混雑していく。
今日のこの店の手伝いをこなすこと。これが千鶴にとって、龍にしてあげられる最大の労いのような気がしていた。
日が落ち、夜の混雑の時間が過ぎても、龍は帰宅しなかった。そろそろ帰ってきてもいいのに、と思う時間だ。
「ちづちゃん、もう遅いし」
言外に、早く帰りなさい、という意味の言葉を、龍の父親は何度も繰り返している。
しかしその度に、龍が帰るまで、と言って、千鶴は店の手伝いをし続けた。
そして、そろそろ閉店と言う時間になり、千鶴は気付く。龍は、あの場所にいる。
「おっちゃん、アタシ、もう帰るね」
「おお、今日は本当にありがとな。気をつけて帰りな」
店を出るなり走り出し、千鶴の思う『あの場所』へと向かう。
596 龍×千鶴  4[sage] 2009/01/01(木) 17:59:17 ID:3kB5TPcW

徹に失恋した日、龍に慰めてもらった川原に向うと、ぽつんと座る黒い影が見える。
「龍」
背中に声をかけるが、返事はない。それが、龍だという答えになっている。千鶴は息を整えながらその背中の隣に座る。
「……見に行けなくて、ごめん」
「いや……サンキュ」
唐突な感謝の言葉だが、それが店を手伝ったことに関してだと、千鶴には理解できる。この少年の不器用さは、誰よりも知っている。どうやって声をかけようか、考えに考えて口を開く。
「あのときの約束、果たそうか」
「ん?」
「アタシが徹に振られた時の!」
唐突な提案に、龍が吹き出して笑う。そういえばそんなこともあったな、と小さく呟く。
千鶴が徹に失恋した時、この川原で龍に慰められた。そして千鶴は、龍に何かあったときは自分が慰めてやると言ったのだ。
「じゃ、慰めて」
苦笑交じりで龍が言うと、龍が千鶴の太腿を枕にして仰向けに寝そべった。
「な、なにしてんのさっ」
「なにって、膝まく」
「言わなくていいっ!」
闇のお陰で見られることはないが、千鶴の顔は既に真っ赤だ。それを悟られたくなくて、そっぽを向く。
「ちょっと硬い」
「!!」
「いて」
自分の太腿が硬いといわれ、反射的に龍の頭を殴る。そんな軽口を重ねたあとで、千鶴が口を開く。
「……残念だったね」
「いや、判ってたことだし」
「……龍の最後の試合、見たかった」
「千鶴」
呼ばれて下を向くと、以前と同じように龍の唇が待っていた。龍は上半身を持ち上げて、千鶴の唇を奪う。
この間のように一瞬で終わるキスではなく、深く重なるそれに、千鶴も目を閉じて応じる。
片手で自分の身体を支えながら、もう片方の手で千鶴の頭を抱き寄せて、より深く交わろうとする唇。
そしてキスを続けながら完全に上半身を起き上がらせると、千鶴を優しく抱きしめる。
呼吸が苦しい。でも、唇は離れない。徐々に息が荒くなる自分に、千鶴は戸惑っていた。
龍の腕が緩められると、その手が千鶴の胸へと移動してくる。大きな手が、千鶴の胸を包むように揉み出す。
「ちょ、待っ……」
「いや?」
いつぞやと同じシチュエーションだ。パニクる脳は、言い訳を考える前に言葉を発させる。
「や、えーと……ここじゃ……イヤっていうか」
そんな千鶴を見透かしてなのか、逆に龍は真面目な口調で訊く。
「ここじゃなきゃいいの?」
「龍っ!」
千鶴の反応に喉で笑うと、龍は立ち上がって千鶴に手を差し出す。その手を借りて立ち上がると、龍は千鶴の手を離さないまま歩き出した。

597 龍×千鶴  5[sage] 2009/01/01(木) 18:01:24 ID:3kB5TPcW

「ただいま」
「お帰り……って、あれ、ちづちゃん」
どこに連れて行かれるのかと思えば、龍の家だった。さっき帰らせたと思っていた千鶴が再度目の前に現れたので、父親は目を丸くして驚いた。
「おっちゃん、……あ、あの、えと」
「千鶴と上にいるから」
焦る千鶴を余所に、龍はこともなげに返事をして家の方に回る。手をつないだままなので、千鶴も龍に付いて行くしかない。店に顔を出したのは、帰ったことを知らせるだけだったらしい。
龍の部屋に入ると、灯りも点けずに再度抱きしめられて唇を重ねる。さっきと同じように優しいキスだ。千鶴を味わうような龍の唇の動きが、頭を痺れさせる。
「んっ……」
堪える声が、呼吸に混じる。龍が、続きと言わんばかりに胸を揉む。指先でその柔らかさを確かめるように、ゆっくりと。
心臓が、破裂するくらいに高鳴っているのが分かる。同時に、体温が上がっていくのも分かる。龍の唇や手の動きに翻弄されている自分が分かる。
悔しいと思うのに抗えない。段々、呼吸が荒くなる。
Tシャツの裾から中に入り込んで、下着の上から触れる手が、熱い。
「……っ」
恥ずかしさから逃げてしまいたくなるが、そうできない自分がいる。
指が、肌と布地の隙間へと入り込んでくる。すでに硬くなり始めた頂上を見つけられ、指の腹で撫でられた時、身体の芯が痺れた。
「千鶴、緊張しすぎ」
千鶴の身体の硬直具合を指摘した声が、耳元に届く。耳に吹き掛けられる息でさえ、今の千鶴を更に緊張させる要因の一つだ。
「あ、あったりまえ……」
少しでも言い返そうとした声が、龍の声で消される。
「俺も、緊張してる」
そうだった。龍も、初めてのはずだ。龍も緊張していると分かって、千鶴は少し笑う。その笑いで少しだけ緊張が解けたのか、自然と手が龍の背中に回る。
その瞬間、千鶴を膝から掬って抱き上げ、ベッドへと下ろす。着ていたTシャツを脱ぐと、薄っすらと差す街灯が、日に焼けて引き締まった肌を晒した。さすがはスポーツやってるだけあるなぁ、と感嘆の言葉が脳裏を過ぎる。
「ごめん。シャワー浴びてない」
試合の後のことを言っているのだろう。ということは、必死で闘った汗がまだ肌に残っているということだ。
「今から浴びてくる余裕もない」
あまりに正直な龍の言葉に、千鶴は笑いを堪えきれない。
「いいよ、別に。アタシも店走り回ったし」
お互い様、と言う千鶴に、龍は口付ける。
「で、でもさ」
この期に及んで躊躇を見せる千鶴は、心配の一つを告げる。
「し、下におっちゃん居るのに……」
こんなことバレたら、と顔を赤らめていると、階下から声が聞こえてきた。
「おいー、龍っ!」
呼ばれて部屋から顔だけ出すと、父親が出掛ける用意をしていた。
「父さん今から町内の集まりあるから。戸締りよろしくな」
「ん。わかった」
気付いて気を利かせたのか、それとも本当に集まりがあるのかは判らない。だけど、龍にとっては最高の父親だ。
598 龍×千鶴  6[sage] 2009/01/01(木) 18:03:01 ID:3kB5TPcW

扉が閉じる音の後に、鍵のかかる音。もうこれで、心配事はなくなった。
脱がされたのか、自分で脱いだのかも覚えていないが、二人で裸のまま抱きしめあった。龍の腕は、限りなく優しい。
龍の唇が首筋や胸元にキスを残し、舌が余すところなく肌の上を滑り、歯が胸を軽く噛んで転がす。
くすぐったいような、気持ちいいような。感じたことのない感触が、千鶴の身体を駆け巡っている。ちょっとでも気を許せば、唇から声が漏れてしまう。
千鶴は声を抑えるのに必死だった。
龍は、誰も居ないし声出せば、と言っていたが、千鶴はどうしてもそれが出来なかった。
さっき我慢できずに出した声は、まるで自分の喉から出たとは思えないほど、甘えた可愛い声だった。それを聴かれるのは堪らなく恥ずかしい。
だけど、その封印は途中で効かなくなった。龍の指が下半身を攻めて来た時、思わず嬌声が溢れ出た。その声に反応して、龍がそこを攻めあげる。
「やっ……龍っ……やだっ……」
「ここ、すごいことになってる」
「やめて…って……やだってっ……ふぁあっ……」
抵抗すればするほど龍の攻めは激しくなり、それに伴って蜜が溢れてくる。
と、急に龍の手が止まって、机の引き出しから何かを取り出した。千鶴に背中を向けてベッドに座ると、なにやらガサゴソとやり始める。
なんだ?と思い覗き込んで目を凝らすと、龍は暗い中で避妊具と格闘中のようだった。
おっと、ここは女が口を出すところじゃないな、と野生の勘が働く。しかし、龍がどうやってソレを手に入れたのかが気になるところだ。
そんなことを考えていると、自身を上手く覆うことに成功したらしく、龍が千鶴に向き合った。
「千鶴」
名前を呼ぶと、膝に手をかけてゆっくりと開かせる。『ハジメテ=イタイ』とは聞いていたため、恐怖はあった。がしかし、それを龍に悟られるのはいやだった。
「いい?」
「そ、そんなこと訊くなっ」
千鶴の、否定のような肯定の返事を待って、龍は自分をあてがい、腰を押し進めた。
「………っつ!」
「痛い?」
「…へ、平気だからっ……ふぁっっ……」
「千鶴、力、抜いて」
言うとおりにしようとするが、なかなか下半身から力は抜けなかった。しかし、一進一退しながらも押し広げながら進入してきた龍は、程なくして千鶴の中に全てを収めた。
「マジ、死にそうに嬉しいんだけど」
龍が落としたセリフは、思わず出た本音なのだろうか。それを聴いて、急に龍への愛しさが増す。
「バカっ……!アタシだって、う、嬉しいよっ」
「千鶴」
龍が千鶴にキスをする。その首に、腕を回す千鶴。そのまま、龍の腰がゆっくりと動き始めた。
「あっ……」
いきなり深くを突かれ、声が漏れる。龍のゆっくりな動きは、痛みを徐々に和らげていく。そして、次第に声を殺すことが辛くなってくる。
「……声、出せば」
そういう龍に、ふるふると首を横に振る。しかし、その抵抗も空しく、龍の動きは知ってか知らずか、的確に千鶴の快感の場所を突いて来る。
「ふっ……ぅっ……んっ………んんんっ…」
思わず喘ぐ。痛みが快感へ。その移行が完了しそうな瞬間、龍の動きが止まった。
健全男子高校生の頑張りはここまでだった。がしかし、二人の初めては間髪入れずに2回目に突入し、千鶴の『移行』は完遂された―――。
599 龍×千鶴  7[sage] 2009/01/01(木) 18:04:13 ID:3kB5TPcW
終わった直後の恥ずかしさといったら、いまだかつて経験がないほどだ。
千鶴は即座に自分の下着を見つけ出しては、身に付けていく。龍もそれに倣いながら、衣服を整えつつ話し始めた。
「この間の質問の答え」
「ん?」
「何になりたいかって、訊いた」
「あー。何のことかと思った」
やっと全てを身に付けて、明かりをつける。乱れたベッドが目に入って顔を赤くする千鶴に、龍がその答えを言った。
「店、継ぐよ」
ベッドの上に胡坐をかいて、龍が話を続ける。
「野球は高校まで、って決めてたし。大学行くほど勉強したいわけじゃない。オヤジの店を継ぐのが、一番の選択だと思う」
千鶴は黙って龍の話を聴いている。
「店の名前も『徹龍軒』だしな」
いまどき、子供の名前を店につけるなんてなー、と二人で吹き出して笑う。ひとしきり笑い終えた静寂に、ポツリと龍が言う。
「なんだかんだ言っても、オヤジも期待してるし」
「そっか」
「千鶴は?」
逆に質問されて、返答に困る。
「アタシは……えーと、……まだ、決めてないや」
その答えに、龍は少し笑ってくしゃっと千鶴の頭を撫でると、送ると言って支度を始めた。
将来を決めた幼なじみの背中が、いつもより少し大きく見えた気がした。


その夜、風呂に漬かりながら将来について千鶴は考えていた。
何かを考えていないと、龍との初めて(2回目も)を思い出してしまいそうだったからだ。
自分は何をしたいのか。何になりたいのか。
昔は徹のお嫁さんになるのが夢だった。今の、アタシの夢は……。
ヒントの糸口が悪かったのか、それが千鶴の本心なのか、それは千鶴本人にもわからない。
千鶴は顔を赤らめて、そのまま風呂の湯に沈めた。
―――うわっ……どうする、どうするっっ!
辿り着いた答えはあまりにもリアルすぎた。そして気付いてしまうとそれ以外に自分がなりたいものがないことも判ってしまった。
この日、千鶴が一睡も出来ずに朝を迎えたのは、「龍との初めて」だけが原因ではなかった。
600 龍×千鶴  END[sage] 2009/01/01(木) 18:05:32 ID:3kB5TPcW

「あぁ?!お前がこの大学狙うなんざー、百万年早いわっ!」
「うっわ、コイツ、身の程を知れーっ!」
数日後、ピンが回収した進路調査用紙に、いいだけ文句を言いながら目を通していると、目に止まった用紙があった。
「真田龍……家業を継ぐ、か」
ふぅん、と鼻を鳴らして次の用紙を見た途端、ピンの顔が訝しげにゆがんだ。
「なんじゃ、こりゃ」
その用紙、吉田千鶴の提出したものには、こう書かれていた。
『第一志望……ラーメン屋』




徹に振られたときに言われた言葉、『妹だと思ってる』。
それは近い将来、現実のものとなる。


 了
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