8月10日。今日は俺の23回目の誕生日。まぁ世間ではただの平日な訳で、特に業務が減ったりすることでもなく、
出勤して、仕事して、仲の良い同僚からのささやかな祝いを傍らに帰宅する。
普段とたいして変わらない。ああ、明日は休日だからか少し浮き足立ってるかな。

俺は一般人だ。昔やったゲームの主人公みたくサイボーグでもホームレスでも未来人でもエージェントでもなく、いたって普通の会社員だ。
強いて挙げるなら、一年ほど前には極めて非現実的で特殊な存在が俺のそばにあり、俺もその世界に連れ込まれていたことくらいだろうか。
その非現実的だったものも今は遠い過去のようで、ただひとつを除いて消滅し、そのただひとつとも一度別れた。
離れると冷める熱、というのはよく聞く。が、離れても燃え続け、ジリジリと身を焦がし、焚き付ける熱と言うのもあるのだろう。
「普通」と「非日常」は一旦疎遠になって、しかし離れてみて初めて「非日常」は、自分を理解したようだ。
その後のことは詳しく語る気はない。
ただ、今でもひとつの非日常は存在し、しかも一年前よりずっと近くにいて、俺はそれをとても喜ばしいと思っている。
これ以上の幸せなんてない。

なんて思いながら歩いていたら、いつの間にか家の前にたどり着いていた。
鞄から鍵を出そうとして、気付く。
そういえば、今日の俺は家に鍵をかける必要がなかったし、晩飯を作らなくてよかったし、帰って真っ暗な部屋に向かってただいまを言わなくても済むんだった。

「お腹を空かせてきてね!」
と言われていた。
時計を見ると、8時半。九時までには帰ってきてほしい、とも言われていた。
ドアノブを捻る。いつもと違い抵抗もなく開き、暖かな明かりが目に飛び込んでくる。

「ピンク、帰ったぞー。」

俺は、非日常な恋人にただいまを告げた。


「あ、おかえりなさい。ちゃんと早く帰ってきてくれたんだ。」
「せっかくピンクが祝ってくれるのに、待たせちゃな。」
茶色の髪に、小柄な体。そばかすがかわいらしい、俺の愛する「非日常」が迎えてくれた。
いつものピンクのパーカーの上に、どこから持ってきたのか、淡いベージュのエプロンを身に付けていて、またそれがとてもよく似合っている。
台所から漂うのは、鼻孔をくすぐるスパイシーな香り。この臭いは……
「カレーか。レトルトじゃないだろうな。」
椅子に座りながら意地悪する。
「失礼ね、ちゃんと一から作ったわよ。あ、でもルーは勘弁ね。」
「悪い悪い、冗談だよ。じゃあ早速いただくか。」
「はいはい、ちょっと待っててね。」
しばらくして、テーブルに並べられる二つのお皿。
もうもうと湯気がたち、見かけは美味しそうだ。
「いただきます。」
カレーを口に運ぶ。一口……二口……三口。
ふとピンクを見ると、まだ一口も食べずに、不安げに俺の反応を見ていた。
「ど、どう?」
「ピンク。お前、料理の経験は?」
「えーっと、ぜんぜん。ねぇ、どうだった?おいしい?」
だろうな。
「んとな、薄い。水が多すぎる。それに、んぐ、じゃがいもは小さく切りすぎて大半溶けちまってるし、はふ、逆にニンジンは大きすぎて食べにくい。
玉ねぎも、むぐ、炒め足りてないせいか噛みきりにくいしな。」
一通り評する。
正直、おいしいとは言い難い。……味だけなら。
「ぅうう……うああああああ〜!!うるさいっ!うるさいうるさいうるさぁぁいっ!!なによ人がせっかく何時間も四苦八苦して作ってあげたのに!
そんなに嫌ならいいわよ!料理の一つもできないダメ女で申し訳ありませんでしたねぇ!」
「ピンク。」
「何!」
「おかわり。」
きれいに平らげた皿をつきだす。
「わかったわよ!!………え?」
ぽかん、と大口をあけて固まってしまった。予想通りの反応にほくそ笑む。
「なんで……?」
「なんでも何もないだろ。こんなおいしいカレーを俺は食べたことがないよ。」
「嘘!だってさっきまずいって!」
「そんなこと一言も言った覚えはないぞ。」
苦笑しながら俺は続ける。
「はじめて作ったにしては上出来だよ。そして、何よりピンクが俺のために頑張って作ってくれたんだろ?
それだけで充分すぎるほどおいしいよ。
ピンク、おかわり。それとも、もうないかな?」
「……あるっ!まだまだあるからたくさん食べて!」
皿を受け取り、ぴょこぴょこ跳ねながら、その後ろ姿は台所に消えていった。
ああ、愛いやつめ。
結局、鍋の中のカレーはすべて平らげられ、俺の腹には皿四杯分のカレーが納まった。


「すごいね、一杯作ったつもりだったのに。アンタってそんなに大食いだったっけ?」
「まぁ、昼飯抜いてきたしな。」
「え!?そこまでしたの?」
「そこまでするさ。ごちそうさまでした。」
「お粗末さま。と言うわけで、あらためて。誕生日おめでと!」
「ああ、ありがとう。……ん?どうしたピンク。」
満面の笑みで俺を祝ってくれてた彼女は、いつの間にか訝しげに辺りをキョロキョロ見回していた。
「いや、いつもならこのタイミングであいつが……、うん、大丈夫みたい。」
「ブラックか。まぁあの人もそうそう何回も覗きになんか来ないだろうよ。」
「だといいんだけど。えっと、それでね。」



「……甘い。すでにカメラは仕掛けずみ。リアルタイムで楽しめる。」
二人の部屋の二階上の空き部屋、黒朱青で小中大、三人の女性が並んでモニターの前に座っていた。モニターにはピンクと男が鮮明に写っている。
「さすがはリーダーやな。」
(同情するわ……。遠慮はしないけどね。)


「……というわけなの、ごめんね。」
「いいって。カレーだけで十分だよ。」
「でも、せっかくの誕生日だったのに……。」
ピンクはちょっと俯いて、申し訳なさそうに呟いた。
要するに、カレー作りに時間がかかりすぎて、プレゼントを用意する時間がなくなってしまったらしい。
なんとも可愛らしく、嬉しい理由じゃないの。
しかし、落ち込ませたままにするのもかわいそうだ。
どうしたものか。
……!
その時、俺の頭に一条の電撃が走った。
なんか一瞬鼻とかとんがった気がする。
そうだ。こうしよう。これしかない。
「ピンク、そんなに落ち込むなよ。つまり俺がプレゼントを貰えば万事解決なんだろ。」
「だから無いって……。」
「有るじゃないか。」
「え?」
今日二回目のぽかんとした表情を見せるピンク。
「いや、こう言うと語弊があるな。居るじゃないか。立派なプレゼントが、俺の目の前に。」
ピンクは一瞬何のことやらわからない、といった感じで首をかしげていたが、すぐ理解したようだ。
「要するに、だ。誕生日プレゼントはピンクがいい。」
「あぁ成る程、あんた天才!ってええええええええ!!?」


夜に不似合いな絶叫が、部屋中に響いた。

「……ナイスノリツッコミ。」
「ははは、ピンクの相棒さんも中々癖もんやなぁ。なあ朱里、朱里の彼氏さんとどっちがやろか?」
「え!?、べ、別にあたしたちは普通のパートナーよ。」
「またまたぁ。なぁリーダー、うちら知っとるもんなぁ。」
「〜〜♪」
朱里、と呼ばれた大中小の中が焦ったように声を荒げる。
「なな何を知ってるっていうのよ!?言ってみなさいよ!ほら!」
「出会い、記念日。」
「夜、廃ビル。」
「まさか外でそんままとはなぁ。」
「……大胆。」
二方向からの小間切れの、しかし的確に泣き所をついた波状攻撃に、朱里は必死に防御する。
「あああ、あれ、あれはあいつが無理矢理……。」
「でも、嫌がる反面、何だかんだで嬉しそうだった。」
「イヤよイヤよも好きのうち、やで朱里。」
「DVD見る?」
「因みにワイヤレスで超小型カメラと連動するんやて。」
「……うがあああああ!!うるさいっ!!」
息もつかせぬ連続攻撃に決壊したディフェンス。ヒートアップ、混乱する頭の隅で、朱里は切に思った。
ババヤガン、是非ともあんたの力をあたしに……。



舞台は二階下の部屋に戻る。その時、ピンクもまた混乱していた。

「なななななに言ってんのよ!?そもそもあたしはものじゃないし、そんな、だって、ええええええ!?」
「何が駄目なんだよ。ピンクはプレゼントをあげられて満足。俺はこの世で一番欲しいプレゼントを貰えて大満足。ほら、丸く収まった。よし、決定!」
ピンクに近づいて、その小柄な体を両手で持ち上げる。
俗に言う「お姫様だっこ」だ。
「ちょ、ちょっと!降ろしなさいよ!」
突然のことに驚きつつも足をバタバタさせて暴れるピンク。
ちょっと持ちにくいな。
「こらっ!はなしてっ!……んっ!」
いきなり口を塞ぐ。柔らかな唇は、とても気持ちいい。舌を絡ませて、ピンクの中を貪る。

ぴちゃ……。

わざとらしく水音をたててやる。名残惜しげに唇を引くと、すっかり力が抜けてしまったピンクが、俺の腕の中にぐでんと横たわっていた。
「大丈夫だって。そんな変なことしないから。」
「ぅう……。」
「とりあえず風呂でも入るか。……もちろん一緒にな。」
「……。」
「……前々から度胸あるなぁ思うとったけど、さすがはウチに説教食らわしたヤツやな。」
「永久保存版の予感……。」
「リーダー、風呂場にカメラは?」
「ない。予測してなかった。」
リーダーと呼ばれた少女は残念そうにかぶりをふって答えた。この日、ピンクにとっての唯一の幸運である。その脇には、完膚なきまでからかわれた朱里が、
プスプス音をたてて、ショートしていた。


「さて、脱がすか。」
ピンクのシャツに手をかける。
「え!?その、そのくらい自分で……。」
「なに言ってんだよ。俺へのプレゼントを俺が紐解かなくてどうするんだ?ほら、バンザイして。」
なんだかんだ言いつつ、負い目からか、されるがままのピンク。当然のようにピンク色のシャツを脱がすと、小柄な体にふさわしい胸を包む下着が現れた。
手早くそれを取り外す。あっという間に下はズボン、上は裸体のピンクが出来上がった。


……これはイイ。風呂に入らずしばらくこの格好をさせたいぐらいイイ。頬を赤くして、おずおずと恥ずかしそうに手を胸にやる仕草なんて、
いつもの快活な面とのギャップもあって見てるだけでヤバい。だが今の目的は風呂に入ることだ。未練がましいが次の動作に移ることにする。

「じゃあ、下も脱がせるか。」
「……い、いい加減にして!!アタシはアンタの奴隷じゃないのよ!もう付き合いきれないんだから……、ぁあっ!や、やめてっ……。」
「ん?逃げ出すんじゃなかったのか?」
ピンクの小さい胸を軽く揉みながら、わざとらしい声で俺は訊いた。
「んっ!だ、だって…、アンタがそんなこと……、ぁあっ!するからぁっ!」
淡いピンク色の、乳房の頂点を軽くつまんだりしながら、その柔らかい感触を楽しむ。
「そんなことってどんなことだよ。どうした、言えないのか?」
「うるさい……。オニ……。」
涙目になり、普段の責めの甲斐もあってか、すっかり抵抗力のなくなってしまったピンクのズボンに手をかける。
「まぁいいや。いい加減風呂に入るか。ピンクも震えてるしな。ほれ、足上げて。」
半分諦めたか、最早なすがままのピンクを脱がせていく。片足、もう片足、するとピンクが纏う最後の砦が露出した。
もとは一色の淡いピンク色だったはずの下着は、すっかりびしょ濡れになってしまって、一部色が変わっている。ピンクも自覚していたのだろう、恥ずかしいのか体をより強く揺らす。
いい反応するなぁ。
「なんだ、さっきのだけでこんなになっちまったのか。……気持ち悪いだろ?」
俺はピンクの下着に手をかけて、ゆっくり引き下ろした。濡れた下着は意外と重く、だんだんと晒される秘所は既にぐっしょり濡れていて……。
つう、と一筋、ピンクの太ももを銀糸が伝う。
床に垂れる前に、指で掬いとった。
「ほら、ちゃんと洗わないとな。」
てらてら光る指をピンクに見せつけたら、寒さではなく、羞恥に震えるピンクは逃げるように風呂場に駆け込んでしまった。
宴は始まったばかり。せっかくのプレゼントを存分に楽しむとしよう。
ほくそ笑みながら、俺はゆっくりとその後を追った。
そう、まだまだ夜は明けない。

ごーしごーし。


背中をほどよく刺激される。気持ちいい。
「流しっこするか。」
そう言ったら、ピンクは思いの外ほっとしたようだった。
ヘンなことされなくてよかった。
目でそう語っていた。


いや、まぁ、ぬか喜びだと思うけどな。


温かいシャワーを浴びさせられる。終わったらしい。
「終わったわよ。じゃあ次はアタシの番。……おかしなことしないでよ。」
「そんなに身構えるなよ。大丈夫。」
どうだか、と呟いて、クルっと後ろを向いて座るピンク。
その白く小さな背中と、ぷりっとした美味しそうな臀部のごく一部と対面する。
ゴクっ……。
欲望を急かすように分泌される唾を飲み込み、はやる気持ちを押さえて、決め細やかな肌を優しく洗っていく。
「んっ、ちょっとこそばいかな……、ぁっ…。」
なんだかんだいい気分なのか、ピンクも気持ち良さそうな声を漏らす。
今すぐ抱きつきたい衝動を押さえて、俺は何とか背中を洗い終えた。

さて。

「よし、いいぞ。……後は前だな。」
「うん、ありがと……、ってぇえええええ!?」
「ん?なに驚いてるんだ?」
「え、で、でも、さすがにそれくらい、ほら、さっきおかしなことはしないって!!」
「せっかくのプレゼントを存分に樂しむだけだ。何がおかしいんだよ。ほら、こっち向いて。」
しかし、やはり恥ずかしいのかピンクは動かない。
その恥じらいっぷりもとてもかわいいのだが、少々じれったくもあった。
仕方ない、仕方ないよな。タオルをたっぷり泡立てて、生成された泡を緩衝材にして、後ろからごくごく弱く、不意打ちぎみに小さな頂を攻めに入る。
「んぁっ!ちょ、ちょっと!ゃめっ、ひゃああ!」
タオルの表面の、ざらざらとした極細の糸の集合体をかすらせるように、乳首を優しく弾く。
明らかに先程とは性質の違う声を出し、力が抜けたようなピンクを後ろから手を回して、体の向きを回転させてやると、目があった。上目使いで俺を睨み付けている。
残念ながら、そんな顔されても全く怖くないどころか――逆に嗜虐心を駆り立てられる。

「遠慮するなって。優しく洗ってやるから。」
「え、遠慮なんてしてない!」「『洗いっこしよう』…確かに俺はそう言って、ピンクは承諾した。おかしいな。正義の味方が嘘なんてついていいのか?」
「う…でも…それは……。」
「それは?」
ピンクの顔が苦悶に歪む。打開策が思い浮かばず、抜け道も見つからないらしい。
「それは…それはぁっ…!うぅっ……ぅああぁあああ〜〜!!わかったわよ!わかりました!もういっそのこと好きにしてぇ!」
「そうそう。人間素直が一番だぞ。」

よし、言質を取ったぞ。
悪いなピンク、昔から口はうまい方なんだよ。というか、ピンクが引っ掛かりやすすぎるのか。


というわけで。苦笑しながら、まずは腕、小さくあどけない手のひらから肩にかけてなぞっていく。もう片方も。たっぷりの泡で表面をコーティングしていく。
「次は胴だな。……手をどけろよ、なにも初めて見られるわけでもないんだし。」
「うう……。」
胸部を覆う手がゆっくりと下がる。
今すぐむしゃぶりつきたい欲求を抑え込んで、決してその先端に触れないように、ぽちっとしたかわいいおへそ、なだらかな膨らみの麓を白く染めていく。
外堀を埋められて、それでも凛としてその存在を示す淡いピンク色だけが外気にさらされる。うん、壮観壮観。
「じゃ、次は足。」
「……どうぞ。」
完全に諦めたのか、ぱたと投げ出された足を、同じように先からゆっくりとなぞる。
小さな足の、甲から出発して、白く細身ながらも、ぷにぷにすべすべして健康的なふくらはぎ、太ももを徐々に登っていく。
一組の登山道の収束の先には、クレパスが申し訳程度の柔毛に護られていた。
よく見ると、その媚壁は僅かながらヒクヒク蠢いている。
刺激を待ち望んでいる、ピンクの身体は確かにそう語っていた。
でも、まだだ。メインディッシュに手を出すには――違うな、棒を挿すにはまだ早い。
手はこれから出すしな。
「さて、泡は塗ったから擦りますか。」
ピンクの体が強張ったのが、端から見てもよくわかる。これまでの流れからしてなにか嫌なものを感じ取ったのだろう。よくわかってるじゃないか。
ピンクの後ろから、そっと双胸を持ち上げる。すぐに限界点まで達するそれを、さっと離すと、ぷるん、とかわいらしい小さい弧を描き定位置に戻った。
「ぁっ…、んっ……、はぁあ……。」
何回か繰り返すうちに、肌は上気し、甘い声を漏らすようになり、どうやらすっかり出来上がったようだった。そろそろいいか。
「おし、ピンク、あと残ったのはここだけだな。」
ちゅく。お湯だけではなく、ピンク自身で濡れているそこを、ピンクの羞恥心を喚起させるために、わざとらしく音をたてて弄くる。
「なんだか随分濡れてるな。……しっかり洗ってやるよ。」
「え?ちょ、ちょっと…何を……、ひっ、ひゃああああ!!」
シャワーを手にとって、水流を「中」にセットし、ピンクのソコを丹念に、水流を押し当てるように洗ってやる。
ところで、だ。
シャワーの先っちょと言うのは、まるで電気マッサージ機のようにうまい具合に丸まっていて、それはつまり――



ぐり。

「ひぁあああ!!やめ、やぁっ!!もうやめてぇぇ!!」
こんな風に軽く押し込んで刺激するのに最適で。強い快楽に溺れ、悶えつつももがくピンクを見ている内に俺の気分もハイになってきた。
モットイジメタイ。
と言うわけで、静まることを知らない俺の右手は、当然のようにシャワーの水流を、「強」へと。
「んはあぁぁぁぁぁっ!!?ひゃ、ひょ、ひょと、つよふぎてっ!!」
その小さな体のどこから絞り出したのか、先程よりさらに大きな声が、狭いバスルームに響き渡る。
その悲鳴は勿論俺の耳にも届き、乱れたピンクの姿も相まって俺をさらに悦ばせる。
うん、もう大分満足した。そろそろ風呂も飽きたし、仕上げにかかりますか。
手首を捻り、シャワーから伸びる無数の水の触手を集約させるように手繰り寄せる。
その水蛇の頭頂部を初めは軽く、徐々に強く押し当てて、軽く振動させる。
それと同時に、空いたもう片方の手で、限界も近いらしく小刻みに痙攣するピンクの身体中を撫で回す、なめ回す……。
こり。
低い山の頂点、ぴんと屹立した桃色の種を、甘く優しくはさむ。
水流に乗じて、すっかりぐしょ濡れのピンクの秘部に新たな五本の触手を侵入させた、その瞬間だった。
「ふ、やゃああああ!?だ、ダメぇぇぇ!!きもち、よす、ぎ……あっ!ぁあああああああ!!」
びくんびくん。ひときわ大きくはねる身体、響く嬌声、迸る奔流。
ピンクが絶頂への階段を一気にかけ上がる傍らで、俺は充足していた。ピンクのこんな顔を知っているのは、きっと俺だけだろう。
満たされいく支配欲、独占欲がとても心地よい。だが、現実は更にデザートを用意していた。

絶頂から20秒ほどだろうか、秘所にあてがったままの手は、未だちょろちょろと流れる生暖かい液体を感じ取っている。
ふと思い、ピンクに視線を移す。先程とは違い、まるでこらえきれない恥ずかしさが具現化したかのように、ぷるぷると小刻みに震えていた。
わずかに同調してふるふる揺れる、小さな胸の意地がとてもほほえましい。顔は真っ赤に染まり、今にも泣きそうな顔で俯いていた。
漂う独特の香り。よく見ると、初めは潮かと思っていた液体は、ほのかに黄色く色付いている。
ああ、なるほど。
にんまりしながら、ピンクに確認する。つまり――
「ちょっと、気持ちよすぎたんだよな。」
「!」
かちん。目の前の男に悟られてしまったことを認識してしまい、ピンクは身じろぎひとつできずに固まってしまったようだ。
その反応に満足して、笑いながら追撃する。
「気持ちよすぎて、ちょっと我慢できなかっただけなんだよな。」
「!!!」
かちかちかちん。
完全に停止してしまったピンクを尻目に、適当にお湯をぶっかけて全身をささっと拭いてやった。
よし、これにて入浴終了。

あれ?ピンク?

「おーい、そろそろあがるぞ、ピンク。」
未だ固まったまんまのピンクに声をかける。放心してしまっているようだ。
「……そんなに気にすんなって。年考えるとちょっと恥ずかしいけどな!」
「だれの……、せいだとっ……。」
涙声。辛うじて泣いてはいないが、あまりの恥ずかしさに動けないのだろうか。仕方ないな。運ぶか。
「さぁ、誰のせいだろうな。よっと!」
首まわりと、大腿部に手を差し込んで持ち上げる。
お姫さまだっこ再びだ。
浴室を出て、リビングを通り抜け、目指すは寝室。さて、そろそろプレゼントもクライマックスだ。
名残惜しいが、目一杯楽しまないとな。

「うわぁ、ピンクのやつ素っ裸やないか。」
「ずいぶん長いお風呂だったようね。」
「……絶対何かあった。」
モニターを一瞥する長身の女性。隣の二人に向き直って、口元を若干歪めて言う。
「しかしなんや、ピンクのやつも乳くさい身体やのぉ。まぁつるぺたリーダーは論外として、なぁ朱里、あんたとピンク、どっちがどやろか。」
「つる……ぺた……。」
「失礼ね、もう少しくらいあるわよ。……多分。」
いささか心許ない胸部に手をやる中背と、絶句する小。
「まぁ、あんたら小さいもんは小さいなりに頑張りようがあるやろし、そない気にせんでもええと思うでー。ケケケ。」
優越感に浸り、嘲るように笑う長身。
その冗談とはいえあまりに鋭利な言葉に、ヒーローたちの固く結ばれているはずの、鉄の絆は――

「五月蝿いわね!大体あんたのだって六割筋肉じゃないの!」

あっさり崩壊した。

「な、なんやてぇ!?」
「……そこそこ大きくても、柔らかさが無いと、意味がない。」
「そうよ。その通りよ。それにあんたのは背ぇたかのっぽの副産物でしょうが!そんなのこっちからお断りよ!」
「……朱里ぃ、いくら親友でも言うて良いことと悪いことがあんねんでぇ!!」
「こっちのセリフよそれは!」「覚悟しぃや朱里!」
「上等よ、最新型の力を見せてあげるわ!」
カーン、とゴングが鳴り響いたわけではないが、切って落とされた火蓋と、モニターを両方見つめながら、いつの間にか戦線離脱していた黒髪の少女は静かに呟いた。
「結局、傍観が一番。……つる……ぺた。」
「ちょ、ちょっと!超能力は反則……、わかったわよ、ごめんなさい、許してくだ……きゃああああ!!」
こうして一人は心に深い傷を負い、また一人の悲鳴が響き渡り、あまりに早い戦いの決着が呆気なく訪れたのだった。



「ね、ねぇ……、もう勘弁してよぉ……、ひゃああ!」
「ん〜?だって、いっそのこと好きにしてくれって言ったの、ピンクだろ?」
「そ、それはそうだけど、こ、こんなのって……。」
こんなの。ピンクは素っ裸で、大股開きで両足を俺に固定されていて、恥部なんて言葉が存在しないかのように、全身を俺の視線の網に絡めとられている状態。
隠されるべき、ごく僅かな恥毛も、その奥の隠れ家も、まだまだあどけない双丘も、その他もろもろすべて。
しかも、それだけではない。俺の視界には、ピンクが二人いる。
もう一人のピンクは左右反対で、俺は触れることはできないけど、その代わりにピンクには自らのあられもない姿を、俺には背中越しに攻める分には見ることの叶わない、
ピンクの厭らしい表情を提供してくれる。
「ほら、しっかり前を向いて。その方がピンクも気持ちいいみたいだし。」
「……、気持ちよくなんて、ないっ……。」
「へぇ、でもいつもより感じてるみたいだけど?」
とくとくと、蜜の湧きでる秘泉。もはや歯止めの効かないそこは、今夜既に散々苛めたことを差し引いても、明らかに異常だった。
「〜〜〜!!」
言わずもがな、自分の体のことだ。ピンクも解っているのだろう。
鏡の中で悶える自分の姿に、明らかに普段とはまた違った興奮を抱いてしまっていることに。それでも、認めてしまうにはあまりに酷だった。
ここで簡単に屈するほど、ピンクのプライドや、羞恥心は柔らかくはないだろうから。
しかし、その意地が否定と肯定、どちらに傾くことも許さずに、思考回路をショートさせてしまう。
結果として何をどうしたらいいかわからず、半泣きで俯いてしまったピンクを尻目に、俺は密かに頷く。
もう気もそぞろ、弱りきって弱点と言う弱点を全てさらけ出したピンクに俺は照準を合わせ、口を開き、偽りの安寧への手紙を送った。

「まぁ、でもさすがにやり過ぎたかもしれないし、そろそろ勘弁してやってもいいぞ。」
進退窮まった相手に、一隻の船を出す。
「え……、ホント?」
突如目の前に出現した、救助船にカモフラージュさせた新しい道に、一握りの疑惑も抱かずに乗り込んできた。
……いいねぇ、それでこそピンクだ。
「ああ、ホント、だ。ただし、俺の質問に答えてくれたらだけどな。」
耳元で囁くように伝える。気分は人を惑わす悪魔だ。
「オーケーオーケー超オーケーよ。んで、なに?」
よし、これでもう手遅れ。しっかし、恨むなら自分か神様にしろ、ってセリフをどっかで聞いたが、ピンクの場合神様も恨めないな、こりゃ。
「……ちょっと、一体何なのよ。今更やっぱり嘘とか言わないでよね。約束は守りなさいよ。」
ん、これは嬉しい誤算だな。ピンク、今のセリフよ―く覚えとけよ。
「まぁ落ち着けって。じゃあ聞くからな。ピンク、……ピンクは、俺のこと、好きか?」
「!!?」
お、怯んでる怯んでる。ホントにいい反応するよなぁ。だからこそ苛めたくなるんだけど。
「どどどうしたのよ急に!?」
「質問に答えてくれよ。約束だろ?」
おーおー、顔色があっという間に変わった。正直見てるだけでも十分面白いな。
「………ぅう、す、好き。」
「どういうところが好きなのかも教えてくれよ。」
「ぇえええええっ!?うー……、えっとぉ……、いまいちなんて言えばいいのか分からないんだけど、あんたと一緒だとなんかこう……、暖かくて、全身が満たされて、幸せでっ!
あんたがいないと、なにやってもあんまり手につかなくて、寂しくて、空しくて、去年この町を出てからずっと、どうしようもなく辛くって、あんたの顔が、あんたとの思い出が、
ぜんぜん消えなくってぇ……、よくわかんないけど、アタシはあんたがいいの!!あんたにどうしてもいてほしいの!!……聞かないでよ、そんなことさぁ……。」
「つっ……。」
顔を真っ赤にしてピンクは叫んだ。本人の恥ずかしさも計り知れないが、仕掛けた本人の俺にもかなり効いていた。
強烈なストレートをもろに顔面に食ったボクサーは、天にも昇る気持ちでダウンすると言うが、今の俺がまさにそれだった。
カウンター気味に入った幸せのパンチに何とか耐えた俺は、朦朧としながらも次の一手を打つ。



「ピンク。俺もピンクのことは大好きだ。ピンクと離れてたこの一年間、今までなら『あたりまえ』だった毎日が、ピンクのいない日常が辛すぎてな。
いつの間にか、ピンク無しじゃなにもできなくなってたんだ。どうしようもなく空っぽで、俺を構成している大部分で、根幹でもあるものがごっそりと抜け落ちちゃったような、
俺も確かに口では上手く説明できないけど、というか、言葉なんかを越えた、満たされない心の軋みや叫びと常に一緒だった。だから、俺は今ここに、自分の側にピンクが居てくれていることが、
幸せでたまらない。こうして、はだかんぼのピンクとふれ合えることが、嬉しいなんて表現じゃ物足りないほどに、俺を揺り動かしてる。」
おっと、ピンクも嬉し恥ずかしでもじもじしてるな。俺の言葉が効いてるのか、『はだかんぼ』が効いたのか、はたまたその両方なのか。
「……でもさ、今でも俺たちは毎日一緒に会える訳じゃないだろ。お互い仕事もたくさんあるし、一週間に一度会えたらいい方だ。俺はさ、一週間でもすごく寂しいんだ。ピンクもそんなことって、ないかな?」
ゆっくり、こくん、とうなずくピンク。
よし、あと一息だ。
「教えてほしいんだ。ピンクはそんなとき、どうやって気分をまぎらわすのか。あのどうしようもなく辛く、空っぽで、切ない気持ちを、どうやってごまかすのかを。」
とと、まだ赤くなるのか。これはもうレッドだろ、ピンクだけど。
しかし、一目でわかる程度の反応はしてくれるだろうとは踏んでいたけど、ここまでとは思わなかった。
「べべ、べつに何も、そんな、あんたが期待してるような恥ぶかしいことは何もひてないわひょ!!」
「いや、噛みすぎだし、そもそも俺まだ何も言ってないんだけど。」
うわぁ、今度は露骨にしまった!って顔になった。ああもう操りやすすぎる。なんか丸裸の砦みたいで、どうぞ攻めてくださいって言わんばかりだ。勿論本人にはそんな気はないんだろうけど。
「と、言うことは、何かあるんだろ、その『恥ずかしい』こと。やってみてくれよ、今ここで。」
「や、やってません!アタシはまったく、けっして、何もやってませんから、あ、あんたが何を言ってるかじぇんじぇんわかりません〜〜!!」
「本当にぃ〜?」
「ホントよホント!!」
懸命に否定してるとこ悪いんだけど、今更、だピンク。
内部侵入を許した砦は、もう陥落している。俺は引出しから一枚のDVDを取り出して、これ見よがしにピンクの前でヒラヒラさせる。後はピンクが餌に食いつくのを待つばかりだ。
「……何、それ。」

はい、終わり。
まぁ予想通りと言うかなんというか。お疲れさまでした、ピンク。
見事に俺の引いたレールに従ってくれて、自ら崖っぷちに立たされに行ったピンクに、俺は――
「これは、こないだブラックから貰った、ピンクのここ三週間ほどの夜の生活を記録したDVDだ。」
――止めを刺した。
「………………、ぇ、えええええっ!!?」
まず、ぽかん、と大口を開けて、数秒後に本日何回目かの驚愕の叫び。
俺の言葉を理解し、みるみる狼狽えるピンク。そんなピンクに、俺はにんまり笑いつつ、容赦ない追い討ちをかました。
「嘘はいけないって、自分で言ってたよなぁ、ピ・ン・ク?」


「うぇぇ……、えげつないやつ……。」
「これは、流石に……。」
「………………。」
先ほどの争いはどこへ行ったのか、今一度モニターの前に鎮座する三人。
その仲の柔軟性を見るに、彼女らの絆は鉄などではなく、太いゴムなのかもしれない。
「にしてもなリーダー、ちょっとやり過ぎちゃうか?盗撮はともかく、流石に彼氏さんにそれ渡すんは……。」
そもそも盗撮だって立派な犯罪なのだが、そんな常識はこの出歯亀少女には通用しない。
しかし、いつもの返事(というか屁理屈又は開き直り)のないことに気がついた中くらいの背のくるくる巻き毛が、リーダーと呼ばれた少女の異変を感じたようだ。
なにかを考え込むように、目を瞑っている。
「どうしたのブラック、難しい顔して。」
「……送ってない。」
「へ?」
「あんなDVD、私は送ってない……、そもそも、私は撮影すらしていない。」
「ええ!?」
「な、なんやって?」
食い入るようにモニターを見つめる三人。映像には、堂々と振る舞う男がはっきり映っている。
「っ、てーことは。」
「つまり……。」
「うん、あれはハッタリ。あのDVDは、ただのDVD。」
数秒間、二人はまじまじとモニターの男を見つめた。その瞳に、若干の怯えの色を宿して。驚愕が、沈黙を生む。
そのまま、十秒ほど経っただろうか。二人の溜め息と共に、部屋は再び音を取り戻した。
「はぁー…。」
「これは……、こいつほんとに一般人かしら……。」
「朱里の彼氏さんもだけど、最近の一般人は異様にハイスペック。」
少女の言葉に、眼鏡の巻き毛は少し誇らしげにうなずき返す。
「ふふん、そりゃあたしのパートナーだもの。当然よ当然。まーぁ、約一名?未だに分数計算もできなくて?戦闘能力もゼロの?セットヴァルエンチンで?
ただの野球バカな男もあたしは知ってるけどね?ねぇ、カズ?」
ここぞとばかりに、先程の反撃に出る中くらいの少女。
「ぅうう……、いいんや。あの人は野球やってる姿が最高にかっこいいからそれだけで十分なんやぁっ!」
「あら、お言葉だけどあの馬鹿もあたしのパートナーも、同じプロ野球選手よ。それに、あいつだってめちゃくちゃかっこいいし、いっつも優しいし、
どっかのバカとは違って頭だってかなりいいんだけどね〜。」
「いつもの朱里じゃない。」
普段の彼女なら決して口にしないだろうのろけっぷりが、言葉の刃となって、相手を切り刻む。
どちらかと言えば、痛め付けると言うより、苛立たせることに特化しているその鈍い斬撃の雨が、次第に一触即発の様相を醸し出していく。
明らかに、総毛立つ空気。
バチバチと火花が散り、正に第二ラウンドが始まらんとしたその時。
「……二人とも、来て。」
モニターを凝視していた黒髪の少女の一声で、不穏な空気は消え去った。
寸前の殺伐とした雰囲気が嘘のように、並んで画面の前に集う三人。
なんてことはない。彼女らの出歯亀根性が、戦闘意欲を軽く上回ったのだった。



「ぅ……、あっ、ふぁぁあっ……!」
「ほら、もっとちゃんと前を向いて。」
「いやああぁ、こんなの、こんなのってぇ……。あああっ!んぁっ!」
「口じゃそう言っても、なんだかんだ言って興奮しちゃってるだろ?ピンク。」
「ちがうぅぅ、そんなことないぃぃ!」
「ふーん、でもなぁ、そんなとこ自分で弄りながら、感じちゃってる人に言われてもなぁ。」「あんたが、あんたがやらせてるんでしょうがぁっ!」
「でも、俺のいないとこでもやってたんだろ?こうやって、一人でさ。」
「うう……、ぅるさい、あぁっ!」
こぷん、と溢れる媚液。くちょくちょと、メインメロディーを奏でる指。むにゅむにゅと、パーカッションを鳴らす手のひら。
堪えきれずに漏れる悦びの声。本来隠されて然るべき自慰を、ピンクは人目の真っ只中で行っている。
しかも、よりにもよって好きな男の目の前で。
さぞかし恥ずかしいだろうが、こっちとしては非常に肉欲を仄めかされる光景だった。

あの後、当然ピンクは拒んだ。泣きながら、酷いだの、やり過ぎだの、プライバシーだの言って、ギリギリのディフェンスを続けていた。
しかし、その守りはあまりにも脆弱だった。
例の野球ゲーム風に数値化すると、肩G守備Gエラー回避Gのタイムリーエラー、サブポジ○付き、と言ったところだろうか。
そんなことを考えながら、必死にわめき散らすピンクを冷ややかに受け流しつつ、ぴんと一本、指をたてた。
だいたいなぁピンク、好き勝手言ってくれてるが――
「第一に。俺はブラックから貰ったDVDを見ただけだ。勿論、中身は知らなかった。」
ぐっ、と喉元が潰れたような声と共に、ピンクの罵詈雑言が止んだ。
魔法のような威力を発揮している人差し指の隣に、援軍を呼ぶ。
「第二に。質問に答えると言ったのは他でもない、ピンク自身だ。約束は守れと言ったのも、な。」
空間を支配するかのように、すくと屹立する二本の指に気圧され、縮こまるピンク。
更に俺は、この圧倒的優位をより磐石なものにするため、更なる兵を配置する。三本の指が、ピンクを撃滅せんと威風堂々と陣形を組んでいた。
「そして第三に、だ。実際問題ピンクが自分で自分を慰めたりしてなければ、何もこんなことにはならなかった。
……さて、原因はどこにあると思う?」
そりゃ、俺のハッタリを見破れなかったどころか、実現してしまったお前にあるよなぁ、ピンク。

悪戯を見咎められた子供のようだった。
ぷるぶると震え、ぐすぐす鼻を鳴らしながら許しを乞う目で俺を見上げてきた。
俺もかなりやり過ぎたし、一瞬勘弁しちゃおうかな、とも思ったが、よく考えなくても言い出しっべは
ピンクだ。その一点が、俺の頭からいっさいの手心を消し去った。
「『いっそのこと、好きにして』『約束は守りなさい』『嘘をつくな』――さて、誰かがこんなことを言ったのを覚えているんだが、だれだったっけ。」
じろりと横目でピンクをにらむ。今、俺はさぞかしにやついた顔をしているだろう。
「俺は質問に答えてくれと言った。で、ピンクは確かに了解した。なのにあろうことか、ピンクは嘘の答えを俺に寄越した。」
「ぅぐ……。」
逃げ道を全て防がれたピンクは、もう何も言えない。
「それなりのお仕置きをしてもいいんだけど、ま、俺も人間だ。もう一回だけ同じ質問をするから、今度はちゃんと答えてくれよ、ピンク。……わかったら、返事をしてくれ。」
「……はい、わかりました。」うん、素直でよろしい。じゃあもう一度聞くからな。
「ピンクは、どうしようもなく寂しい時、独りで居ることが辛いときが、あるって言った。じゃあどうやってそれを紛らわしているのか。俺に教えてくれないか?……体で。」
語尾にちょっとしたオプションを追加することにした。このくらいのボーナスがないと、ハッタリを成功させた旨味がない。
「え、う」
ピンクはもう言葉が出てこないのか、口をパクパクさせてるだけだ。
「約束は守るんだよな?ピンク。」

初めはおそるおそるだった指使いも、やがては勢いを増していった。
そこに本能と理性の葛藤があったのは確かだろうが、すでに相当弄られていたこと、後ろからなじる俺の言葉責め、そして鏡に映る自らの姿に負けてしまったのも、また確かだった。
そうして、今。
濡れそぼった秘所を、ぷくりと肥大した豆を、張りつめた二粒の種を、控えめながら確かに存在する柔らかな果肉を、ピンクの指は駆け巡る。
やや強めに暴れたり、軽くタッチしたり、つまんだり、つついたり。その手つきのよさは、どこをどういじれば、より気持ちよくなれるのかを熟知しているかのようで、
ピンクの独りでいたしていた回数の多さを、暗に示していた。快感を求める身体に呼応するように、ひたすら自らを貪るピンク。
もう止まらないだろう。
一度堕ちてしまえば、後はどこまでも突っ走ってしまうものだ。

「ふぁあっ!あはぁぁっ!」
一際大きな声が上がり、ピンクの身体がぷるぶると小刻みに震え始めた。どうやら、そろそろ限界も近いらしい。
「あっ、ふっ、うあ、んあぁっ!……も、もうっ、……!?」
「はい、ストップ。」
もう一息、あとほんの少しで絶頂へと達する、そのギリギリを見計らって、後ろからピンクの腕をつかみ上げた。
「え……?」
潤んだ二つの瞳が、困惑の色を帯びつつ見上げてくる。
「どうして……。」
「さあ、どうしてだと思う?」多分、ピンクも薄々わかってるんじゃないかと思って聞いたのだが、どうやらそれは俺の思い上がりだったようで。
腹の中で期待した答えは返ってこずに、その代わりに。
「お、おい、ピンク?」
「……ひくっ、うぇぇ……。」
ピンクの、声にもならない嗚咽が返ってきた。
どうやら妙な方向に勘違いされたのか、ピンクはぽろぽろ涙をこぼし、本気で泣いていた。
ああ、またやってしまった。
決して泣かせるつもりはなかった。女を泣かせる男は録でもないヤツ、その程度の常識は俺にもある。
そんなこと、解っているのだ。解っているのだが、ピンクがあまりにいじめやすく、いじるとかわいいからついやり過ぎてしまう。あわてて弁解しようとした時、ピンクが先に答えを返してきた。

「わかったわよ……、き、キライなんでしょ!?アタシのことなんて……!
ひっ、いっつも、ひぃっ、いっつもいじめるし……。ひどいよぉ……、アタシは、アタシはアンタが大好きなのにぃぃ!!」時々しゃくりあげながら、全身を悲しみに震わせてピンクはむせび泣いていた。
ここまで思い詰めさせてしまっていたのか。さすがの俺も罪悪感を感じる。とにかく、一刻も速く誤解を解かなければ。



「ピンク。」
「っく、何よ!!」
「悪かった。ピンクをそこまで傷つけてしまうとは思わなかったんだ。言い訳をさせてもらうと、さっきはさ、ピンクが、その……、そろそろイきそうだったから。だから最後は俺も一緒にしようかな、って思ったんだ。
なんとなくピンクもわかってるんじゃないかと思ってちょっと意地悪したんだけど……。」
「……。」
「ピンクは、可愛いんだよ、とっても。いつものピンクでも十分可愛いんだけど、ちょっとからかったりしたらすぐ赤くなって、慌てて。そんなピンクはいつもに増して魅力的で、正直、俺にとって天使だ。俺だって、ピンクのことは大好きだ。
それはもう狂おしいぐらいで、それでにたまにやり過ぎちゃうんだ。でも流石に今回は度が過ぎたな。謝るよ。ごめんなさい。」
俺の言葉も霧散して、沈黙が空間にはびこる。今ピンクが何を思っているのか。もしかしたら許してくれないんじゃないか。
不安ばっかり膨らんで、ばつが悪くて、非常に息苦しい空気だった。
「……拠は。」
そんな空気に耐えかねて、もう一度口を開こうとした瞬間、ピンクから小さな呟きが漏れた。
「え?」
小さすぎて、聞き取り損ねた。しばらくすると、ピンクがさっきよりちょっと大きな声で再度呟いてくれた。
「……証拠は、って言ってるの。アタシのことが嫌いじゃないんなら、……大好きなら、その証拠を示して。」
ピンクが望む証拠とは何なのか。全くのノーヒントだった。にもかかわらず、俺は瞬時にピンと来た。
と言うより、ここで来なかったら色々と失格だ。
ピンクの髪に優しく触り、少しだけ頭の向きを右にずらす。俺はそれに覆い被さるように体を密着させて、首から先を前にもたげて……、
「んむ……あむ……。」
ピンクの唇に優しく口づけた。咥内で絡み合う舌と舌の動きは激しくもどこか柔らかで。両立するはずのない二つの相反する感覚の混在が、妙な高揚をもたらす。
それはピンクも同じだったらしく、名残惜しくも唇を離したときには、涙の跡も残る瞳をとろんとさせ、何だかくすぐったいのか小さく身悶えしていた。
そろそろ俺も我慢できない。今日はいじめるばっかりで、俺自身はまだ何一つ欲望を吐き出していなかった。
「なぁピンク。もう、いいかな?」
「……うん、いい、んじゃないかな。」
よし、精神もシンクロしてるし、後は合体するだけだ。
「じゃあ、いくぞピンク。……よっと!」
「え!?ちょっと!?」
座ったままピンクを抱えあげる。余談だが、ピンクの体重はとても軽い。こうして座ったままでもそこそこ持ち上げられるんだから相当なものだ。
だから、一度やってみたかった。離陸させたピンクを、ゆっくりと着陸させていく。
ちゃんと合体できるように、しっかり狙いを定めて。
そう、結合点はぎちぎちに張り詰めた俺のモノと、さながら大湿原状態のピンクのソレだ。よく狙って、ゆっくり、ゆっくり降ろしていく。

「うああああっ!ふあっ!あああっ!!」
ピンクは徐々に、だが確か俺を咥え込み、飲み込んでいく。
それに連れて、俺たちの合体もより完全なものへと近づく。


そして。
「だ、あっ、だめぇぇぇ!!奥に、おくに固いのがぁっ!!」
零地点到達。完全に合体した俺たちは、快楽の津波に溺れる。いつも以上にみちみちと締め付けてくるピンクの媚壁に、俺は剛直を激しく擦り付ける。
この異常なまでの興奮は恐らく鏡のせいだろうと、強烈な浮遊感を伴う、紅い性欲に支配されていてあまり働かない頭で考える。
この体勢だと、繋がっているところ、お互いの熱を帯びた表情。普段は見えない様々なことが、何から何まで開けっ広げに同時上映されているからだ。
「ね、ねぇ、あた、シも、だ、ぁああっ!!」
「ああ、俺も……だ……!」
がっしりピンクをつかんで、激しく揺さぶってやる。軽い絶頂にもう何度も襲われているのか、ちょっとだらしなく空いた口からは涎がこぼれ、目は虚ろに宙をさ迷っている。
俺もいい加減キツい。そっちの方もだが、この体勢もだ。幾らピンクが軽いと言えども、長時間は持たない。名残惜しいが、宴もたけなわ、お開きにしよう。
一度、合体を緩める。そして一気に突き上げ、これ以上ないほど動きを速く、強くする。
はち切れんばかりの射精感に抗うことなく、そのまま、目の前の白い閃光への道を突き走る。
「ふゃあぁ!?うあ、よすぎて、おかしく…………うぁああああああっ、くるっ、あついのが来てるっ!!!」
「ぐっ……、う゛あぁっ!!」
快楽が頂点に達すると同時に、全てが白く染まり、途方もない解放感と脱力感に襲われた。最後の力を振り絞り、ピンクの膣内から己を引き抜く。
ばたん、とベッドに倒れ込むのと同時に、備え付けの時計から、小さな鐘の音が聞こえた。荒い息を整えつつ、その音色に耳をすませる。
一回……二回……三回……。

その鐘は、新しい一日の訪れを知らせていたのだとわかったのは、十二回目の音色が鳴り終わってからだった。


「ねぇ……、誕生日、終わっちゃったね。」
すぐ隣の、小さく愛らしい存在がぽつんと言葉を落とす。
……日が変わった。俺の誕生日は、この狂乱の宴は終わりを告げた。俺はまたひとつ年を取って、またひとつ子どもから遠ざかる。
思えば、子どもの頃はもっと仕事に、将来に夢を持っていた。割りと本気でプロ野球選手になれる気がしていたし、そうでなくても、
そこそこの大学を出れば大手の会社に就職できて、それなりの人生を過ごせるじゃないかと、なんの根拠もなく信じきっていた。
それが、だ。大学まで続けた野球は、汗水垂らして身につけた芸は身を助けず、就職予定の会社は潰れた。
こんな悲運ってあっていいのかと、相当参っていたとこに輪をかけるように隣人と親友が失踪。しかも事件の容疑者として刑事に疑われ、
必要に迫られて調査するとあまりに浮世離れした全貌が見えた。
共に戦ってくれる仲間集め。BARU、サイデン、渦木さんにミーナさん、そして、ピンクとの出会い。
もう何が起きても驚かないと肚をくくった矢先に、度肝を抜かれたピンクの正体。
チームの強化のために、バイトに明け暮れる日々。たまの息抜きにピンクと遊びに行ったかと思えば、超能力バトルに巻き込まれたりもした。
『正義の味方』ブラックとの邂逅に、初めてのピンクとの合体、デイライトとダークスピアとの対決、そして勝利。
居酒屋で上げた祝杯は、この上ない達成感に満たされていて、あの時のピンクのはにかんだ涙ながらの笑顔は、今も俺の記憶に大事に保管されている。
夏の終わり、満を持して挑んだデウエス戦。尋常じゃない相手のテクニックと、非常に見にくい球場に苦しみながら、もぎ取った未来。
そしてピンクとの別れ。去り間際に泣いていたピンク、去ってからひとりぼっちで泣いた俺。去年だけで、あまりにたくさんのことがあった。

「どうしたの?」
「ん?」
ピンクの声で、過去の旅から現実に引き戻される。
「だって、なんだかぼーってしてたから。」
「ああ、去年のことを思い出してた。」
「うわ、なんだかじじ臭くない、それ。」
「うん、俺もそう思う。」
苦笑して、でもな、と俺は続ける。
「去年は色々と濃すぎてさ。俺も二十三年生きてきたことになったんだけど、それまで割りと普通の人生だったから余計に思い出しちゃって。」
去年は現実に絶望もした。苦しんだ。それでも、得たものも多かった。なんとなく感慨深くて、ぎゅっとピンクの手を握る。
小さく、柔らかい手だが、確かな暖かみが伝わってくる。
えぇい、もう辛抱ならん。なぁピンク、俺はなぁ、俺は今なぁ、とっても、とっても――
「幸せだよ。」
「きゃ!」
勢いでピンクに抱きつく。かわいらしい悲鳴が聞こえたが、全く気にしない。
「どうしたのよ急に。い、言っとくけど二回戦はもう無理……。」
「幸せだよ、俺。二十三年生きてきたけど、こんなに幸せなのって初めてだ。ありがとう、本当にありがとう、ピンク。」
そうだ。色々と辛いこともあったが、今、俺はこうしてピンクを近くに感じられる。それだけで去年の苦労なんてお釣りが来る。
ところで、何かピンクがおかしい。目を合わせようとしてくれない。頬は紅潮していて、結ばれた口は微妙に蠢いている。


何で視線をそらすんだよ。何か悪いことでも言ったか?」
「べ、別に何でもない。アタシはいつも通りよいつもどーり!」
うん、いつもと違うね。
抱きついたままでもわかるくらい顕著に、ピンクはもじもじしていて、声は上ずっていた。それはまるで、恥じらっているようで……。
ははぁ。
何となく勘づいた俺は、その勘が的中していることを期待して、ピンクに揺さぶりをかけた。
「ピンク。お前、照れてるだろ。」
「っ…………!」
ビンゴ。目をぐるぐるさせ、明らかに挙動不審な態度をとるピンクが、分かりやすすぎて、なんとも滑稽だった。俺はちょっと嬉しくなって、もっとピンクに体を密着させる。
「ピ〜ン〜ク。」
つんつん赤い頬を突っつく。なにか言いたそうにもごもご口を動かしていたからだ。
「……ずるい。」
「ん?」
「ずるいずるいずるい!そりゃ照れるに決まってるでしょうがあんなこと言われたら!……お礼を言いたいのはこっちもなのに。」
最後の方がよく聞き取れなかった。
決して不注意ではなく、意図的にピンクが音量を下げたからだ。しかも、何かとても嬉しいことを言われた気がする。
「ごめん、最後の方何て言ったんだ?」
「……知らないっ!何でもない!」
「そんなこと言わずにさ、教えてくれよ、ピンク。」
ピンクは若干逡巡していたが、もうやけくそだと言わんばかりに声を荒げて、破裂した。
「う、だからさぁ、あんただけお礼を言うのがずるいって言ってるの!アタシだって、アタシだって十二年間で、今が一番幸せなのに、一方的にありがとうなんて言われたら、
先に幸せなんて言われたら、嬉し恥ずかしでワケわかんないのよ!!」
はぁはぁとひと息ついて、なおピンクは続ける。
「ずっと一方通行だったから。アタシはブルーへ、オレンジはアタシへ。アタシの、そしてアタシへの想いは一度として向かい合うことはなかった。」
以前聞いた、ピンクを縛っていた過去。屈折し、複雑に絡まった見えない糸を少しずつ、少しずつほどいてここまでやって来た。
「だから、全然わからなくて。初めて自分が求めてた人に求められて、それをはっきりと伝えられて……、一方通行じゃなくて相互通行で、どう受け入れたらいいのか全然わかんなくって。
嬉しいのよ?天にも昇る気持ちって言うのかな?……でもどうしたらいいかわかんなくってさ。そんでもうパニックになっちゃって、んで何だか照れ臭かったの!」


なんだ、それでか。
つまり、湧き出る気持ちを的確に表現できなくて、抑圧された感情が自然とにじみ出たわけだ。どう喜べばいいのか、ねぇ。そんなの簡単なのに。
「とりあえず、だ。今ピンクは幸せなんだろ?」
「……うん。」
「じゃあ、そんなに気負わなくていいんだ。その幸せに目一杯甘えて、胸いっぱいにたっぷり吸い込んで、ごろごろ寝転がって、ひたすら幸せを堪能すればいいんだよ。」
「でも、そんなにひとつに依存しきっちゃうと、それを失ったときの痛みもすっごく大きいのよ。……アタシはあんな思い、二度としたくない。」
「だからって毎日を後ろ向きに過ごすのも勿体ないだろ。」
それでも不安の色を消しきれないピンクに向かって、俺はピンクへ薬を処方する。
「そんな思い、俺がさせない。俺は居なくならない。少なくとも、俺がピンクの幸せである限りは、絶対だ。」
成分は覚悟と約束。
効能は――
「ホント?約束したからね。信じていいんだよね。…………ありがと。」
――持続する安心と、過去からの解放。
この薬効は、いつまでも続く。いや、違うか。続かせるんだ、俺が。
「ん、じゃあさ、もっとくっついて。ぎゅってして、あなたの大きさを、力強さを、頼らしさを、たっくさん感じさせて。そうしながらアタシは眠りたいな。
いろいろあったから、疲れちゃった。」
「了解だ。」
さっそく薬の効き目を試された。試されたからには、期待に応えなけれはならない。小柄なピンクを、俺は包み込むように抱擁する。
やがて、すうすう寝息が聞こえてきた。満足して、俺も目をつぶる。まどろむ意識のなか、俺は微かに呟いた。
「おやすみ、ピンク。おやすみ、みんなのヒーロー。……お休み、俺のヒロイン。」
腕の中でこくんと、ピンクが僅かに頷いた、気がした。


「ふぁー、お腹一杯やな、リーダー。」
「後はデザート。明日ピンクにお風呂で何があったのか、聞くだけ。」
「容赦ないわね。」
どこからか取り出した黒マジックで、DVDに何やら書き記すリーダーの少女。
「なんて書いてるの?えーと、Pink’s Pretty Present」
「はぁ成る程、ピンクの可愛いプレゼント、って意味やな。」
「違う。ピンク『は』可愛いプレゼント。……タイトルをつけないと、コレクションがどれがどれだかわからなくなる。」
そう言って少女はケースにDVDをしまい、満足そうにパラパラめくる。
「しっかし、相変わらず一杯あるのぉ。まぁ大体制覇してもうてるウチもウチやけど。」
少女からケースを渡してもらい、長身の女性もまた物色していた。が、とあるタイトルのところで手が止まる。
「ん、これ知らんなぁ。なになに、『白い恋人』?なんやこれ、どっかのお菓子みたいやな。」
そのタイトル名が引っ掛かったのか、眼鏡の少女は眉をしかめて考え込んだ。
「白……、しろ……、ホワイト……、まさか!」
「それは秘蔵の一枚。今年のホワイトデーの朱里の……。」
「……うがああああ!!返しなさい今すぐ返しなさい消しなさい爆発しなさいやめなさいうわああああああ!!!!」
大噴火。よっぽどこの一枚はスゴいらしい。
「また今度、見せてあげる。お楽しみに。」
「あぁ、楽しみにしとくわ。おっと、朱里、銃はアカン銃は……ってイオンボールはもっての他やぁ!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうわああああああああああああ!!!!」
「町を破壊する正義の味方……ウルトラマン?」
午前二時、草木も眠る丑三つ時、世界の破滅を防ぐため、のっぽ対巻き毛の第三ラウンドがいざ開幕しようとしていた。

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